IPSモデルは、精神障がいを持つ人々の就労支援に革新をもたらしています。一人一人の強みや希望を大切にし、実際の職場での経験を重視するこのアプローチは、従来の方法よりも高い効果を上げています。就職率の向上、就労期間の延長、収入の増加、そして生活の質の向上など、IPSの効果は多岐にわたります。
IPSとは何か
IPSの定義
IPSは、Individual Placement and Supportの略称で、日本語では「個別型就労支援モデル」と呼ばれています。このモデルは、1990年代にアメリカで開発された、主に精神障がいを持つ人々のための就労支援プログラムです。IPSの最終目標は、重度の精神障がいを持つ人たちが自分らしい生活を取り戻し、精神保健福祉サービスへの依存から脱却することにあります。
IPSの基本的な考え方は、「重い精神障がいを持つ人であっても、本人の興味や強みに合わせて職場を選び、働くことができる」というものです。この信念に基づき、IPSは個人の希望や能力を重視し、実際の職場での経験を通じて就労を支援します。
IPSの特徴
IPSモデルには、いくつかの特徴的な要素があります:
- 迅速な就職活動支援:就職の希望があれば、速やかに就職活動の支援を開始します。
- 個別化されたアプローチ:同じ障がいでも、個人によって強みや困難さが異なるため、一人一人に合った仕事の開拓を行います。
- 継続的なサポート:就職後の定着支援に期限を設けません。
- チームアプローチ:精神障がいは環境や状況により変化するため、トレーニングを積んだ医療保健の専門的チームが支援にあたります。
- 本人の好みの尊重:職探しは本人の技能や興味に基づいて行われます。
これらの特徴により、IPSは個々の利用者のニーズに合わせた柔軟な支援を提供することができます。
従来の就労支援との違い
IPSモデルは、従来の就労支援とは異なるアプローチを取ります:
- “Place then Train”アプローチ: IPSは、まず就職してから、職場での訓練と継続的なサポートを提供します。これは、従来の“Train then Place”(訓練してから就職する)モデルとは対照的です。
- 症状や障がいの重さを重視しない:IPSは、病気の症状や障がいの程度を就労継続の障壁とは捉えません。
- 一般就労の重視:IPSは、地域社会で精神疾患を持たない人たちと一緒の職場で働くことを重視します。これは、本人の生活の質を高め、健康を増進させ、スティグマ(周りからの否定的なレッテル貼り)を軽減すると考えられています。
- 柔軟な働き方:IPSでは、利用者のニーズに応じて、パートタイムや短時間勤務など、様々な働き方を選択できます。
- 社会保障に関する支援:IPSの支援者は、社会保障給付に関する知識を持ち、利用者の不安に対応します。
これらの違いにより、IPSは従来の就労支援モデルよりも効果的であることが示されています。大島らの研究によると、IPSを用いた個別就労支援群は、従来の施設トレーニング型就労支援群と比べて、はるかに高い就労率(44% vs 10%)を達成しています。
IPSの8つの原則
IPSモデルは、8つの重要な原則に基づいて運営されています。これらの原則は、効果的な就労支援を提供するための基盤となっています。
- 対象者を限定しない
- 本人の希望を尊重
- 迅速な就職支援
- 継続的な支援
- 一般就労の重視
- 多職種連携
- 系統的な職場開拓
- 経済的カウンセリング
IPSの効果
IPSモデルは、従来の就労支援方法と比較して、精神障がいを持つ人々の就労支援において顕著な効果を示しています。
- 就職率の向上: 多くの研究で、IPSを利用した障害者の就職率は著しく高いことが示されています。
- 就労期間の延長: IPSを利用した人々はより長期間にわたって仕事を継続する傾向があります。
- 収入の増加: IPSを利用した人々はより高い収入を得る傾向があります。
- 生活の質の向上: 就労を通じて、社会的機能の改善、病状の軽減、自尊心の向上、社会的なつながりの拡大、経済的自立などが期待できます。
日本におけるIPSの展望:就労継続支援A型事業所との連携
日本においては、就労継続支援A型事業所が、IPSモデルの理念と親和性の高い枠組みを提供する可能性を秘めています。A型事業所は、雇用契約に基づき最低賃金を保証した就労の場を提供し、一般就労への移行支援も行います。特に、施設外就労という形態は、IPSの“Place then Train”アプローチと合致する点が多く、利用者が実際の職場環境で経験を積みながら、必要なスキルを習得し、就労定着を目指せるという利点があります。
A型事業所との連携による企業側のメリット
企業がA型事業所と連携して施設外就労を受け入れることは、社会貢献だけでなく、企業側にも様々なメリットがあります。
- 採用リスクの軽減
- 人材育成コストの削減
- 多様な人材の確保
- 業務効率の向上
- 企業イメージの向上
- 人材不足の解消
- SDGsへの貢献

就労継続支援A型シェルティの取り組み
就労継続支援A型シェルティでは、IPSモデルの理念を参考に、利用者一人ひとりの個性と強みを活かせる就労支援を目指しています。具体的には、株式会社丸合様、名和食鶏有限会社様といった地域企業との連携を通して、施設外就労の機会を積極的に提供しています。これらの企業様では、食品加工や鶏肉処理といった業務を通して、利用者は実践的なスキルを習得し、責任感と自信を育んでいます。地域企業との強固なパートナーシップのもと、利用者の適性や希望に合わせた仕事を提供することで、就労定着と一般就労への移行を支援しています。
結論
IPSモデルは、精神障がいを持つ人々の就労支援に革新をもたらしています。一人一人の強みや希望を大切にし、実際の職場での経験を重視するこのアプローチは、従来の方法よりも高い効果を上げています。日本でも、IPSの効果が確認されていますが、導入には課題もあります。労働市場や社会保障制度の特性を考慮しながら、IPSを適切に取り入れていく必要があります。特に、就労継続支援A型事業所における施設外就労は、IPSモデルとの親和性が高いと考えられます。A型事業所では、雇用契約に基づき、最低賃金を保証しながら働くことが可能です。また、施設外就労を通して、一般就労への移行を目指せる環境が提供されており、まさにIPSの“Place then Train”アプローチを体現できる可能性を秘めています。就労継続支援A型シェルティのように、地域企業と連携し、実践的な就労機会を提供するA型事業所の取り組みは、IPSモデルの理念を具現化する例と言えるでしょう。企業はA型事業所との連携を通して、社会貢献と事業成長の両立を実現できる可能性を秘めています。A型事業所における施設外就労の更なる普及と、IPSモデルの原則に基づいた支援の充実によって、日本版IPSの確立と、精神障がいを持つ人々の就労支援の更なる発展が期待されます。
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